電気エネルギー変換研究室

2016/4/1 電気エネルギー変換研究室のウェブページは移転しました
新URLはこちらです

HOME > 研究室概要 > パワエレ班 研究紹介

パワエレ班 研究紹介 (担当:教授 小笠原 悟司2014/04/16


研究内容の概略

パワーエレクトロニクス技術は,現代社会のあらゆる分野で利用されており,省エネルギーのキーテクノロジーであるばかりか電気エネルギーのマネージメントを行う重要技術となっています。例えば,電力分野においては,可変速揚水発電,風力・太陽光・マイクロ水力発電などの自然エネルギー発電,静止型無効電力補償装置(SVC)や電力用アクティブフィルタ,高電圧直流送電や周波数変換装置などがあげられます。運輸分野では,電気自動車やバッテリーチャージャー,インバータ駆動の電車,補助電源装置など,また家庭では,インバータを用いたエアコンや冷蔵庫,LED照明にも利用されています。また,情報通信分野では,モバイル機器のACアダプターをはじめ各種機器のスイッチング電源や無停電電源装置(UPS)にも使われています。

主な研究テーマは,

  ( I ) 半導体電力変換器の高性能化に関する研究

  ( II ) モータドライブシステムの高性能化に関する研究

  ( III ) パワーエレクトロニクス機器のEMI/EMCに関する研究

などに大別されます。

( I ) 半導体電力変換器の高性能化に関する研究

インバータをはじめとする半導体電力変換器は,省エネルギーに欠かせない技術としてさまざまな分野にその応用範囲を広げています。これら半導体電力変換器は常に,より高効率,小型,高速・高精度制御,大容量,低ひずみ・低ノイズが望まれており,これらの目標に向かって研究を続けています。
  最近の研究例として,低ひずみと高い電圧利用率を実現可能なPWMインバータのデッドタイム補償法(1)を紹介します。電圧形PWMインバータにおいては,半導体スイッチングデバイスの短絡を防止するために,スイッチングの際に上下のデバイスを両方OFFする期間(デッドタイム)を挿入します。しかし,このデッドタイムはPWMインバータの実際のスイッチング時刻を変化させてしまうために,大きな電圧ひずみを発生させてしまうという問題点がありました。従来は,オープンループでこのスイッチング時刻の変化分だけスイッチング信号を予め補償していましたが,完全に補償することは不可能であるために,電圧ひずみ率を数%以下に低減することは困難でした。提案したデッドタイム補償法は,インバータのスイッチングの遅れをフォトカプラを用いた簡単な回路で検出・フィードバックし,次のスイッチング時刻を適切に遅らせて補償するもので,1%以下の超低電圧ひずみ率が実現できることを実験により示しました。また,デッドタイムを挿入することで最大出力電圧が低下すること,また従来のデッドタイム補償では大電圧出力時にかえってひずみを増大してしますという問題点がありましたが,提案法では理論限界の電圧出力までひずみなく動作可能であることを実験により示しました。

( II ) モータドライブシステムの高性能化に関する研究

電気自動車やハイブリッド自動車などにおいて用いられるモータドライブシステムは高効率特性が要求されるため,回転子に永久磁石を埋め込んだ内部永久磁石同期モータ(IPMSM)が広く用いられています(2)。IPMSMを高速高精度で制御するためには回転子位置の情報が必要であるため,従来は機械的な位置センサを回転子軸に取り付けなければなりませんでした。しかし,位置センサの取り付け精度がドライブ特性に影響するだけでなく,位置センサの取り付けによるモータ小型化への制限,位置センサの温度や粉塵などの耐環境性によるドライブシステムの適用範囲の制限,センサ信号の断線による信頼性の低下などの問題点が指摘されており,位置センサを用いずモータの電圧電流信号から回転子位置情報を推定する位置センサレス駆動法の研究がおこなわれてきました。しかし,従来の位置センサレス駆動システムでは,十分な精度と応答性が得られないという問題点がありました。

本研究室で開発した位置センサレス駆動システム(3)は,PWMインバータの発生する高調波電流からモータのインダクタンス行列を求め,IPMSMの突極性から回転子位置を推定しています。PWMインバータにはデッドタイムや順方向電圧降下などの非線形性がありその影響で位置推定精度が悪化するという問題点がありましたが,これらの補償法を開発することにより,電気角で3度以内の高い位置推定精度をリアルタイムで得ることに成功しています。これは数百パルスのロータリエンコーダの精度に匹敵し,位置センサレス駆動システムを簡易サーボとして使用できることを意味しています。また,この方法では位置推定と同時にモータインダクタンスのリアルタイム高精度推定が可能であるため,これを利用した磁極判定も実現できることを実証しました。

( III ) パワーエレクトロニクス機器のEMI/EMCに関する研究

インバータをはじめとするパワーエレクトロニクス機器は,半導体パワーデバイスのスイッチングを基礎として電力の変換・制御をおこなうため,高い変換効率を簡単に得ることができます。しかし,これらのスイッチング動作は伝導性と放射性の両方の電磁妨害(EMI)を発生することがあり,その解決が強く望まれています。

例えば,電気自動車用の急速充電器は 50 kW 程度の比較的大容量であるにもかかわらず一般ユーザが直接利用する機器です。変換器自体は金属筺体に包まれているためにEMI対策は比較的容易ですが,充電ケーブルは金属筺体の外部に位置しているために,ケーブルがアンテナとなって放射性EMIを発生する恐れがありました。シールドケープルを使用すればEMI抑制効果が得られますが,ケーブルの柔軟性が失われケーブルの取り回しが困難になるという問題がありました。本研究室では, 20 cm 程度のシールド導体とフェライトコアを用いた高周波フィルタを金属筺体内に設置することにより,10 MHz以上の周波数帯域でEMI低減効果があることを実験的に示しました(4)。



(1) 小川 将司 , 小笠原 悟司 , 竹本 真紹:「低ひずみと高い電圧利用率を有する高周波PWMインバータのフィードバック型デッドタイム補償法」,電気学会論文誌. D, 産業応用部門誌133(10), 970-977, 2013-10

(2) 廣田 幸嗣(編著) 小笠原 悟司(編著) 船渡 寛人(共著) 三原 輝儀(共著) 出口 欣高(共著) 初田 匡之(共著):「電気自動車工学 ―EV設計とシステムインテグレーションの基礎―」,森北出版,2010-12

(3) Gu, M.L., Ogasawara, S., Takemoto, M.: “Sensorless IPMSM Position Estimation Based on Multi SVPWM with Elimination of Inverter Nonlinear Effects,” IEEJ Transaction on Electrical and Electronic Engineering, Vol. 9, No. 2, 2014

(4) 妹尾 政宏,小笠原 悟司,竹本 真紹,玉手 道雄:「シールド静電容量を利用したEV急速充電器ケーブル用EMIフィルタ ―放射性EMI抑制効果の実験的検証―」,平成25年電気学会全国大会,No. 4-150,2013-3